「可能性の話しをしているだけで、全ての家が同じケースだとは言ってはいないよ」
「確かに。ただそのように思ったのは、平という私の名字が何処から来て何処へ行くのかなんて、聞いたことも想像したこともないし、家門すら知らないものですから。湯浅さんのおっしゃることは、私にはロマンチックすぎます」
「興味がないのかね?」
「それは、依頼についてですか、それとも家の話しですか」
「両方だと言っておこう」
「家の方は、欠片ほどの興味も持ち合わせておりません、今が精一杯です。精一杯だから、雲を掴むような依頼内容に、少々戸惑ってます。嶋田さんの見解はどうなんでしょう」
断り文句を考えていたはずなのに、興味を示したニュアンスの言葉が口から次々と飛び出してしまう。まだ酔ってはいない、酔うには早すぎる。頭の中でそう反芻してみたが、拒否という感覚がすでに鈍り始めていたようだ。
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